LOST MUSIC〜消えない残像〜


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耳を澄ませば虫の音が聞こえる初夏の夜。


俺はたった一人で美星丘から今日、七月七日の夜空を見上げていた。


俺が一人で来ることになるなんて、思いもしなかった。


……初めて一人で七夕の天の川を見上げることになることも――。


一人で見上げる天の川は、輝きを失い、まるで空のゴミくずを集めたよう。


あの幻想的な星々が織り成す煌めきは跡形すらない……。


毎年星羅と見た天の川は、決してこんなものじゃなかった。


今だって星羅の隣で見た天の川は、瞼の裏にしっかり焼き付いてる――。



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