LOST MUSIC〜消えない残像〜


俺は頭の片隅でそんなこと思いながら、星羅の話に耳を傾けた。


「でも、働き者だった織姫と彦星は夫婦になってから働かなくなったの。だから織姫のお父さんが怒って、二人は天の川を隔てて引き離されてしまったんだって」


星羅は子供が拗ねるようにしゅんとして言ったが、またにこりと笑ってこう続ける。


「だけどね、年に一回、この七夕の日だけは、カササギが橋になって二人は会うことを許されたの。ほら、ロマンチックな話でしょ?」


星羅は織姫と彦星に思いを馳せるように瞳を輝かせた。


そして俺にくしゃりとした笑顔を見せて、嬉しそうに話し掛けるんだ――。



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