LOST MUSIC〜消えない残像〜


……だが、願いは叶わず、傷口はぱっくりと広げられた――。


「――星羅が……星羅が……待ってるのがわかないのっ……?」


宝石のような雫が、橙色に染まった床に真っ直ぐ落ちて小さく跳ね返る。


その反動が、胸の奥を軋ませ、ずきりと痛みだした。


なおることのない傷口を、なんとか形だけでも繕ったのに……。


――ほら、こんな簡単に開いてしまうんだ……。


息もできないくらい苦しくて、胸は張り裂けそうに悲鳴を上げる。


智也は泣く千秋の背中を優しく擦って、雅臣は出ていけといわんばかりに横目で睨んでいた。


やっぱり俺に居場所なんかない。


俺は胸の痛みに嘘を吐いて、平気な顔して逃げ出した。



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