LOST MUSIC〜消えない残像〜
「……待ってられるかよ」
俺はぽつりと独り言のように言う。
「え……」
笑顔が消え不安げに瞳を揺らす星羅。
俺はそんな星羅の手を引っ掴むように握って、そっぽを向いた。
「……俺は放さない。待ってなんかいないで、傍にいる」
この口が、声が――、星羅への想いを紡ぐことはうまくできなくて、不器用な俺はこれが限界。
だから、星羅のひんやりと冷えた指先に熱を伝えながら、この想いも伝わってることを祈るだけ……。
そう、言葉では言えない想いを、できるだけ温もりにのせて――。
すると、星羅が目を細めてはにかむから、伝わったような気がして俺も胸があったかくなるんだ。