LOST MUSIC〜消えない残像〜
「マジ!?じゃあ、決定だからね、雅臣!翠月ちゃん、スタジオでできるってよ!」
千秋は子供のようにはしゃぎ、瞳を爛々と輝かせる。
しかし、錫代は対照的に少し眉をひそめた。
「私なんかがスタジオで練習なんて……。あ、あの、奏斗先輩は……?」
不安の色に染まる瞳で俺を見つめる錫代。
俺はそんな姿に、胸が針で突かれたように淡い痛みが広がって、誰にも分からないくらい弱く唇を噛み締めた。
――きっと俺がなんて答えるか分かって聞いてる……。
「俺は行かない。それまでにお前が弾けるようにしてやるよ」
だけど俺は、分かっていたって決して錫代の望む答えは返せない……。