LOST MUSIC〜消えない残像〜
戻せはしない時計の針
――鬱陶しい蝉の音が聞える。
無駄に命を削るように、そして、生きた証を遺すように鳴く蝉たち。
ただでさえ短い人生でそんなことをするのは馬鹿だと思う。
どうせ何かを遺そうが、人々は必ず忘れ去る。
だから、そこまでして生きる価値なんて、この世にはありはしない。
この荒んだくだらない世界など……。
俺にはこの世界で生きることなんて、既に無意味なのだから。
今日も勉強机に向かってテキストを機械的にこなしながら、馬鹿らしい夏休みという日々をやり過ごす。
こうでもしてなきゃ、星羅のことばかり思い出してしまうから――。