LOST MUSIC〜消えない残像〜
「おっ、来た来た奏斗!」
喧しい声を出し俺の前に現れた無駄に元気な千秋。
「うるせぇな」
ほら、やっぱり来てんじゃねぇか。
俺はため息を吐きながら靴を脱ぎ捨て部屋に上がると、智也は麦茶を運んでいるところだった。
「なあ、智也、おふくろさんは?」
すると、智也は奥の襖を指差して苦笑する。
「二日酔いで奥で寝てるから、気にしないでくれ」
確か智也のおふくろさんは近くのスナックで働いたと思う。
おふくろさんは美人で優しいが性格は男前で、智也とは正反対だ。
狭いけど、きちんと整頓されている部屋からは、家事は全部智也がやっていることが想像できる。