LOST MUSIC〜消えない残像〜


手伝うことのない俺等はただ見ているだけ。


千秋は瞳を輝かせて智也の手元を覗き込み、俺は壁に寄り掛かってそんな光景を見ていた。


さっき板に付いているとは言ったが、智也はやっぱり台所には似合わない気がする。


だって、体格もよく、金のメッシュが入ったイカツイ男にエプロンだなんて、ミスマッチすぎると思ったら、ちょっと笑えてきた。


すると、千秋がふっと笑みをもらし、こう言う。


「なんかさ、こうしてると思い出すね」


小さな台所に千秋の穏やかな声が響く。


「よくみんなで遊んだ、小さい頃のこと――」



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