LOST MUSIC〜消えない残像〜
心の傷の痛みに思わず拳をかたく握った。
次々とよみがえる生き生きとした星羅の姿は、どんどん痛みへと変わっていく。
千秋はすぐにはっとしたが、俺は背を向けてテーブルの方へ黙って逃げた。
「と、智也、できたなら運ぶよっ」
「おっ、おう、できたぞ」
後ろから聞えるのは、あからさまに取り繕った声。
……俺は二人のこういうところが苦手だ。
星羅の話題になると、俺を腫れ物に触るように扱う。
そんな風に気遣われるくらいなら、雅臣みたいに俺を責めてくれた方が数倍いい。
可哀想なのは俺じゃなく星羅で、俺が気遣われることなどおかしな話だ……。