LOST MUSIC〜消えない残像〜


平静を装う二人はそそくさと小さなテーブルに料理を並べていく。


でも、俺は黙って座ってた。


ここで二人に何か言っても、仕方ないと思うから……。


「さあさあ、食べよっか!」


千秋は席に着くや否やスプーンを握り締めて号令をかける。


でも、俺は一つ余計な炒飯に目が止まった。


智也のおふくろさんは大抵昼は食べにこないのに、何で……。


「……それ、何だよ?」


俺が視線で指し示せば、智也がごく自然に答える。


「あぁ、遅れるけど、雅臣も来るんだ。最近は部でも顔合わせてるしいいだろ?」


――雅臣が……。


「悪ぃ、智也。遅くなっちまった」



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