LOST MUSIC〜消えない残像〜
運命のイタズラ
――桜の木の下にあの姿を見た日から数日が経っていた。
春の中途半端に暖かい日ざしが廊下を満たし、下校しようと歩を進める俺の足を怠くする。
さっきから欠伸が出て思考を余計にぼやけさせるが、ある男子生徒の話だけが鮮明に聞こえてきた。
「なあ、お前知ってるか!?あの超美少女!」
「ああ、見たよ!でもさ、誰かに似てねーか?俺等の学年で見たことある気がすんだけど……。えーと、あぁ、立花だ!」
――立花……?
星羅に……?
ぴたりと張りつくように歩みが止まる。
周りの喧騒が一瞬にして遠退いて、脈が早まっていく――。