LOST MUSIC〜消えない残像〜
「……ごめん」
重い空気に辛辣な言葉がとけていく――。
そして、繋がれた手はするりと簡単に解けていった。
まるで糸を割くように……。
絆なんてきっとそんなもの。
いや、元々バラバラだったんだ。
それを一本の糸に見せ掛けていただけのこと――。
部屋中に虚しいドアの音が響いたのと同時に、智也は壁にもたれて崩れていった。
俺にはかける言葉さえありはしない。
いつも他人のために笑顔を見せる智也の、こんな姿見たことない……。
――世界なんて悪い方には簡単に変わる。
でも、時間だけは戻せない。
もうあの時の俺等には戻れないんだ――。