LOST MUSIC〜消えない残像〜
前を見据えた千秋の、愁いを帯びつつも燐とした声が森の静寂を割る。
遠退く全ての騒めきと、千秋のもとにやさしく注ぐ木漏れ日――。
「智也の優しさに甘えてた。甘えきってた――。智也といる時は楽だから――」
そう話す千秋のやわらかな光に包まれた横顔は、切なそうだけど、一番穏やかに見えた。
「それは智也の隣が居心地いいってことじゃねぇの?」
問いかければ、千秋は俺に間の抜けた顔をむける。
「まあ、後は自分でなんとかしろよ」
智也と千秋なら大丈夫だろ――。
そうして俺は木漏れ日の落ちる道を引き返し、その場を後にした。