LOST MUSIC〜消えない残像〜
「先輩はおつかいですかぁ?」
スーパーで偶然会った錫代は、夕方の帰り道を俺と共に歩いていた。
夕方と言えど今は夏でまだまだ明るく、そんな中で錫代は屈託のない笑顔を浮かべている。
あんな事情を抱えながら、よく綺麗に笑えるもんだな……。
「……まぁ、そんなとこだ」
正直、どうでもいい質問だったから、俺は素っ気なく返した。
「そうですか。うちはお母さんが出て行ったままで私が家事やってるんですよ」
錫代は、料理も下手ですけどねと付け加えて、舌を出し笑って話す。
でも、その笑顔はまたどこか悲しそうなんだ……。
瞳の奥が弱々しく揺れてる――。