LOST MUSIC〜消えない残像〜
「話せるわけ……ないですよ……。どうせ……私なんか……」
伏せられた睫毛は長い影を落として、目尻には微かに輝くものが滲みだす。
その絶望に満ちた顔は、自分でも俺に似ていると思えたほどだ……。
でも、違う。
俺と錫代には決定的な違いがある――。
「――錫代は、言いたい相手は生きてるじゃねぇか――」
そう、これが俺と錫代の決定的な違い。
錫代の言いたい相手は、生きている。
……でも、俺はそれすらできないから。
いくら伝えたいことがあっても、生きていなくちゃ言えないんだ――。