LOST MUSIC〜消えない残像〜
すると、錫代は静かに足を止めた。
黒い影もぴたりと動かなくなる……。
「……でも、言ったところで……」
聞こえてきたのは沈みきった泣きそうな声。
そして、最後まで紡がれなかった言葉。
「何もならないって、言いたいのか?」
錫代の顔は苦しげなものに変わって、その言葉を口にしたくなかったことぐらい容易く分かる。
でも、俺は続くであろう言葉を敢えて口にした。
――思わずレジ袋を持つ手に微かに力がこもる。
錫代の諦めきったような表情を見ていたら、胸の奥がもどかしくあつくなっていったんだ。
そうして耐えきれなくなった胸は、奥底に沈めた想いを紡ぎだす――。