LOST MUSIC〜消えない残像〜
まあ、そんなこと言ってる俺が、くだらないと例えた連中よりもずっと無意味な存在なんだよな――。
「おはよう、奏斗」
聞こえてきた穏やかな声に気付いた時は、金のメッシュをさらりと揺らした智也が笑顔を向けていた。
智也の笑顔はいつもと同じはずなのに、知ってしまった俺には無理してるようにしか見えない。
だけど俺は、笑顔の奥のボロボロな智也に手を差し伸べることはできなかった。
智也が無理して作った笑顔という名のバリアを、壊してはいけない気がしたから……。
「おはよ」
だから、俺は普通に挨拶を返すことしかできなかった。