LOST MUSIC〜消えない残像〜


こいつの言うことは、いつだって俺の予想の範囲を出る。


普通の奴なら興味本位で過去を掘り返すだろう。


でも、錫代はそうじゃなかった。


何も聞かずにただ微笑むんだ。


ドジで危なっかしいくせに、似付かわしくない包み込むような雰囲気を纏って――。


本当に不思議な奴だ……。


「会ってみたいな、星羅さんに――」


そして、錫代の透明な声が願いとなって空へ広がっていく。


「俺だって会いてぇよ……」


引き替えに何を失ったっていいから、星羅に会いたいよ……。


だけど、何をしても絶対に不可能なんだ。


「去年の秋、星羅は死んだんだ」



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