LOST MUSIC〜消えない残像〜
「生きている人間には、伝えられると――」
俺は美しい音に導かれ、不思議な空気を纏う錫代を見た。
ただの言葉が、まるで五線譜の上を滑り、言葉以上のものが胸に流れ込む。
「雅臣先輩には伝えられるじゃないですか」
頭の中で錫代の言葉が残響となり、俺は無意識にその言葉をリピートする――。
「私は両親に全部言ってやりましたよ!何も変わらないかもしれないけど、もう悔いはありません」
そう言った錫代の笑顔は、闇を吹き飛ばしそうなほど晴れやかなものだった。
そうして、この後に続く錫代の言葉に、俺は吸い込まれていく。
「それに、星羅さんは生きてるじゃないですか――」