LOST MUSIC〜消えない残像〜


決して強くはないけど、懸命に生きる錫代。


俺はそんな錫代に見惚れていた。


その姿が、星羅の思い描いた六等星そのものだったから――。


その時錫代がふと思わぬことを口にした。


「あと、奏斗先輩は気付いてないけど、星羅さんは幸せだったはずです」


そうして、聞こえてきたのは『六等星』のワンフレーズ――。


「“恋い焦がれたのは不器用な六等星”」


何故か涙が頬を伝った。


理由は分からない。


でも、そのメロディに胸がいっぱいになる――。


「『六等星』の詩は星羅さんからのメッセージです。先輩が前を向くことを望んでるんですよ――」


俺は、何も答えられなかった。


星羅の本当の気持ちはもう分からないのだから……。



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