LOST MUSIC〜消えない残像〜
しがみつく臆病者
――朝目覚めれば、俺は眩しい朝日に目を細めた。
鳥のさえずりに、通勤の車の走行音、今日も勝手に一日が始まる。
そう、いつも聞こえてた向かいの窓からの声が聞こえなくなっても。
きっと誰かがいなくなろうとも、この世界は何事もなかったように回るのだ。
起き上がり瞼を擦るが、押し下げるような重さは拭えるはずもない。
あの後、一人夜中まで美星丘にいた俺は、あまり眠っていないのだ。
俺は散々考えた。
家に帰らず、知らない場所へ行って、全てを捨てようかと……。
だけどやっぱり、俺が選んだのは、哀しみしかないベッドの上だった。