LOST MUSIC〜消えない残像〜
「そんなこと言うなよ。新入部員が来たって、俺等には奏斗が必要なんだ」
智也は優しく包み込むように声をかけてくれるが、俺はそれを拒んで無視をする。
そうして俺は行き場もなく、ギターの弦もはじけない、歯痒く組まれた指先に視線を落とした。
――これで無理矢理引っ張ってこられることがなくなるなら、俺にとっては願ってもないことだ。
もうこんな空間にはいたくもない。
新入部員が来れば、ようやくこのStellarから離れられるんだ――。
俺はそう心に深く刻むように組んだ指に力をこめる。
その刹那、戸に何かが衝突したような鈍い音と間抜けな悲鳴が聞こえた。