LOST MUSIC〜消えない残像〜


俺はおふくろの手を乱暴に振り払って遠ざけた。


「俺の苦しみも知らないくせに!親だからってずかずか入ってくんな!!」


大声で全部をはき出した。


すると何故が痺れるような痛みが左頬に広がって、俺は目を見開く。


「二度と、母さんにそんなこと言うんじゃない」


目の前には厳しい顔をした親父が、俺を見据えている。


初めてだ――。


いつも笑顔で、いつも俺をそっとしておいてくれた穏やかな親父が初めて怒った。


俺の前に佇む親父の姿は見たことがないくらい強くて大きくて、俺に言えることなんてあるわけない。



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