LOST MUSIC〜消えない残像〜


そう言うなり千秋は強引に腕を引く。


「ちょ、やめろよ。部は?」


俺はしかめっ面で引っ張られながら、ため息を吐いた。


千秋は突拍子もないことするから、まったくもって分からない。


「あぁ、それなら平気」


やっと手を離した千秋は、キャラメル色のボブを揺らして弾けるように笑ってみせた。


「今日はね、色々あって臨時休業」


臨時休業……?


得意げな千秋の顔に益々謎は深まる。


あのバンド馬鹿達が練習休むなんて有り得ない。


「だから、朝から死んだ魚みたいな目をしている誰かさんの面倒みてやろうかと思ったの」



< 226 / 299 >

この作品をシェア

pagetop