LOST MUSIC〜消えない残像〜


死んだ魚の目って……。


まあ、俺なんてそんなもんか。


そう悟りつつ、ガキみたいに縁石の上をふらふらと歩く千秋を横目に、俺は距離をおいて歩いた。


「ホント、奏斗はヘタレだなぁ。そうやって、雅臣のことずっと引きずってんだ?」


千秋は変わらぬ明るい声音で、平然と核心を突いてくる。


「別に」


俺は吐き捨てるように言って俯いた。


足元にはアスファルトから雑草が頭を出していて、ゆっくり足を退ける。


俺よりこの雑草の方がよっぽど強く見えたんだ。


すると千秋が縁石をおりて真顔でこう言い放った。


「奏斗、あんたが引きずるなんて大間違いだよ――」


< 227 / 299 >

この作品をシェア

pagetop