LOST MUSIC〜消えない残像〜


胸の中で渦巻く様々な想いを消し去るように、手の甲で目頭の熱いものを拭う。


ぐちゃぐちゃになった想いは肺をも締め付けて、俺は背にある扉に体を預けた。


ふと、目の端に映りこんだのは、暗い部屋の中で侘しく光る七時をさす時計の針。


千秋がVegaのページにいけと言った時間。


何で今更、星羅のケータイ小説を……。


思い起こせば起こすほど、千秋の言葉が、疑問が、脳裏を占拠した。


気が付くとケータイを手にとって、期待を隠せない指が今にも確かめようとしてる。


願いと諦めが入り交じり、最後のボタンを力を込めて押す。


そして瞳を開けば、見たこともない作品のタイトルがあった――。



< 235 / 299 >

この作品をシェア

pagetop