LOST MUSIC〜消えない残像〜
あの日以来、俺は初めて見ただろう。
ニヤリとした悪戯な雅臣の笑顔を――。
背から差し込む日の光は、雅臣の笑顔をより一層、包み込むように輝かせる。
「ん。ほら」
そして、ぶっきら棒に突き出された雅臣の拳。
俺は溢れかけた想いを食い止めるように唇を噛み締めた。
幼い頃の記憶がよみがえる。
――小さな拳を突き合わせた、仲直りの合図。
こんな日を、また迎えられるなんて思わなかった。
気が付けば、雅臣の笑顔は悪戯であたたかくて、何一つ変わってない。
雅臣はずっと俺に気付かせようとしてたんだな――。