LOST MUSIC〜消えない残像〜
俺は深く息を吸うと、みんなにもう一つの頼みを告げた。
「あと一つ頼みがあるんだ」
足元に置かれた鞄から一枚の紙を取り出すと、雅臣に手渡した。
「この曲を、星羅に届けたい――」
それは、メロディと歌詞が走り書きされた五線譜。
溢れてきた星羅への想いを必死に書き留めた一曲。
俺なんかの歌を好きといってくれる星羅に、どうしても届けてやりたい――。
「忙しい奴だな、お前は。学祭はすぐだぞ。錫代はお前が責任持って仕込めよ」
呆れたようにため息を吐かれたけど、今なら雅臣の優しさが分かる。
「じゃあ、さっさと練習すんぞ」
こうして、笑顔が一つ増えた俺等はようやく動きだした。