LOST MUSIC〜消えない残像〜
ここから
――風がそっと頬を撫でる。
俺は夕闇に包まれた坂を登りながら、上を向いた。
黒いシルエットとなった木々の葉が揺れて、自然のメロディを奏でる。
瞼を閉じれば、さらさらとした音が心地よい――。
こうやって風が流れるように、時間もゆっくりと流れてるんだ。
しっかりと地面を踏みしめながら、そんなことを思ってみる。
この地球からみれば、まだ瞬きにもならない時間しか生きてないけど、俺にはいろんなことがあった。
喜びも痛みも、出会いも別れも……。
苦しすぎることもあったし、間違いもいっぱいした。