LOST MUSIC〜消えない残像〜
うまくは言えないけど、これだけは伝えておくべきだと思ったから――。
錫代には、間違いなく助けられたから――。
逸らした目をもう一度錫代に戻せば、長い髪をふわりと揺らして俺に微笑みかけてきた。
「お礼を言うのは、私の方ですよ」
凛とした声で言うと、錫代は遠く先を見据える。
「私、やっと自分らしく生きられる気がします。――お姉ちゃんが見守っててくれるから」
そして、まるで花が咲いたように錫代は笑う。
俺はそのくしゃりと目を細めた無邪気な笑顔に、一瞬だけ思い起こさせる。
星羅を――。