LOST MUSIC〜消えない残像〜
でももう、胸は苦しくならない。
寧ろ心があたたかくなるんだ。
「それに奏斗先輩の歌があんなに傍で聞けて、私幸せです」
ほら、またこんな小さなことで、屈託のない笑顔を見せる。
俺等の日々に比べれば、錫代と過ごした時間はまだまだ浅い。
だけど、俺はもう錫代の表情をどれだけ見てきただろう。
どれだけ俺に、いろんな言葉をくれただろう。
「本当に変わってるな、錫代は――」
俺は夜空を見上げて小さく笑みをもらす。
俺の歌を聞けて幸せなんて言う物好き、星羅以外にいるなんて思ってもみなかったから――。
錫代も、俺にまた歌わせてくれた大事な奴なんだ。