LOST MUSIC〜消えない残像〜
「待てよ、奏斗」
がっしりとした体を息を切らせて揺らす智也がいた。
「何だよ?」
心配してくれてるのは分かってるのに、口を突いて出てくるのは角の立ったものばかり。
「奏斗の気持ちは分かるよ。でも別人だ……。戻ってきてくれよ」
そんなの俺だって分かってる……。
俺が一番分かってるよ……。
「言ったろ、戻らないって。新入部員は智也が面倒見ればいい。面倒見いいんだから」
だけど、やっぱり俺は戻れない。
分かってても星羅に見えるんだ。
俺は智也をそのままに背を向けた。
――神様は何でこんなに意地悪なんだろう……。