LOST MUSIC〜消えない残像〜
俺は静かに瞼を閉じる。
“――奏斗――”
今にも星羅の紡ぐ俺の名前が聞こえそうなのに……。
「……星羅――。」
ほら、名前を呼んだって何も返ってこない。
あの頃は恥ずかしくてろくに名前なんか呼べなかったのに、あれから何回呼んだだろう……?
呼ぶたびに、愛しさと恋しさが溢れるように湧いて、込み上げる。
こんなに苦しいことだなんて思わなかった――。
……星羅の声がきけないことが。
……なぁ、一度でいいから返事してくれよ、星羅……。
まだ、俺はこんなに星羅でいっぱいなんだ。