LOST MUSIC〜消えない残像〜


―――――――
――――

俺は頬杖をつきながら、窓という額縁に切り取られた外の風景をぼんやり眺めてみた。


この一春を生き急ぐようにただ花をつけ散らせる桜。

能天気に青い空。

気ままに浮く雲。


何の面白みもありはしない。


それなのに何で、つまらない景色に目をやっているのかといえば、今朝の桜の木の下を確認するため。


もちろんあの木の下には、誰もいないし、何かの痕跡もなさそうだ。


バカとしか言いようがないな、俺は……。


あり得もしない期待をしていたのか、それともついに幻覚を見たのか。


どっちにしたって笑えるよな。


「おい、サボり魔!」



< 5 / 299 >

この作品をシェア

pagetop