LOST MUSIC〜消えない残像〜
失ったモノ
――足に重りでもついているかのように、歩みが遅くなる。
真っ白な部室の扉が迫れば迫るほど、重りの重量は増していくようだった。
俺は躊躇するように立ち止まり、鞄を肩に背負い直す。
ふと、背負い直した指先に、肩に違和感を感じた。
部室に行くには明らかに肩にかかる重みが少ない。
……かつて当たり前だったものがないんだから当然か……。
今更こんなことを思うなんて、どうかしてる。
俺が呆れてため息を吐きながら部室の方を見ると、ちょうど錫代が入っていくところだった。