LOST MUSIC〜消えない残像〜


でも、この空気を作り出す原因は間違いなく俺。


俺がいなくなれば、うまくいくんだ。


「俺はあくまで錫代にギターを教えに来ただけだ。こいつがマスターすれば、またバンドできんだろ。それまでの話だ」


俺は淡々と言葉を並べ、その空気を自ら断ち切る。


俺がさっさと教えて、早くここを離れればいいだけの、……簡単な話だ。


――そうだ、それだけのこと……。


「奏斗……、これをきっかけに戻ってこないか?奏斗がいなきゃ、Stellarは」


「悪ぃ……。それは無理だ……。ほら、早く教えなきゃだから始めようぜ」


俺は智也の優しさを軽くあしらって、逃げたんだ――。



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