LOST MUSIC〜消えない残像〜
俺は見つめる錫代に気付かないふりをした。
そして、ただ淡々と一人分ほどの距離をおいて錫代の隣に腰掛ける。
「あの……、奏斗先輩……」
細い声で伏し目がちに声を発する錫代。
「何だ?練習しないのか」
無駄口なんかたたきたくない俺は冷たく言い放つ。
何も知らずに呑気に白く輝く壁も、
星羅に瓜二つな姿がこの空間に存在することさえも、
俺には堪え難いことなのだから――。
なのに、どれだけ苦しめようとする……?
「奏斗先輩は、……本当にそれでいいんですか?何も知らない私に言う資格はないですけど……」