LOST MUSIC〜消えない残像〜


俺は見つめる錫代に気付かないふりをした。


そして、ただ淡々と一人分ほどの距離をおいて錫代の隣に腰掛ける。


「あの……、奏斗先輩……」


細い声で伏し目がちに声を発する錫代。


「何だ?練習しないのか」


無駄口なんかたたきたくない俺は冷たく言い放つ。


何も知らずに呑気に白く輝く壁も、

星羅に瓜二つな姿がこの空間に存在することさえも、

俺には堪え難いことなのだから――。


なのに、どれだけ苦しめようとする……?


「奏斗先輩は、……本当にそれでいいんですか?何も知らない私に言う資格はないですけど……」



< 57 / 299 >

この作品をシェア

pagetop