LOST MUSIC〜消えない残像〜
「すみません!一生懸命やってるんですけど、私昔から鈍臭くて……」
錫代は体を縮めて、情けなさそうにもじもじと俯いている。
これは鈍臭いですむレベルなのか……?
こんなコードの一つも覚えていない奴に教えなきゃならないのかと思うと、先の見えない道程に嫌気がさす。
「それでよく軽音部に入ったな。ほら、ギター貸せ」
俺はどうしても放っておけない問題を解決すべく、触れたくもないギターを手に取った。
心とは裏腹に疼く指先。
今、手にあるものは俺の相棒じゃないのに、ネックを握った時のこの恋しさはなんだろう……。