LOST MUSIC〜消えない残像〜
俺にはこんな目、見ていることもできない。
まっさらで夢に心躍らせる瞳。
胸が痛くなるだけだ――。
逃げるように視線をずらせば、テーブルの上に錫代が置いたギターの入門書があった。
「無駄な話はいい。それでコードを完璧に覚えろ」
「はっ、はい!」
あの瞳から逃れて俺は胸を撫で下ろす。
その刹那、聞こえてきた耳に馴染んだ音たちに心が震えた。
安心感のあるベースライン、パワフルなキーボード、それを引っ張るドラムのリズム。
そして、抜け落ちているのはギターの音色……。