LOST MUSIC〜消えない残像〜
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あの日から何度この戸の前に立っただろう。
まだ温もりが残っているんじゃないかと信じたくて、そっと指先で壊れ物のように触れてみる。
――しかし、感じるのはいつもひんやりとした冷たさ。
そう、これも分かってることだ……。
だけど、それでもここにくるのは、少しでも星羅を感じていたいから――。
他人は愚かだと笑うだろう、いつまでも空想のような世界に浸っていることを。
でも、俺には必要な時間で、失いたくない空間なんだ。
俺は扉を開け放つと、その空間へと足を踏み入れた――。