LOST MUSIC〜消えない残像〜


小さな体が窓際に座り、白いしなやかな腕が動いて綺麗にページを捲る。


栗色の艶のある髪はひだまりに包まれて、お伽話から出てきたお姫様のように金色に輝く。


そして、読み耽っていた本から顔を上げると、俺に気付いて顔をくしゃっとさせて笑うんだ。


弾けるようなとびきりの笑顔で――。


……でも、これはあくまで幻想だ。


その愛おしい幻想は、音もなく泡のように一瞬で消えてゆく。


だけど、それでもいいんだ。


ここには、星羅との記憶の断片が散らばっている場所だから。


切なくても、星羅といられるなら、俺はそれでいい。



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