LOST MUSIC〜消えない残像〜
イカツイ見かけにそぐわない気遣いを俺なんかに向けているのは、藤崎智也。
「千秋に連れてこられただけだ」
俺は智也の優しさに、一線を引くように抑揚のないぶっきらぼうな声を出した。
空気は気まずく、ずしりと重く肩にのしかかる。
この空気は紛れもなく、俺自身が作ったものだ。
……俺みたいな人間が優しくされてはいけないから。
俺が立ち去ろうとした時、言葉という鋭利な切っ先を突き付けられた。
「また逃げるのかよ」
ドラムを前に座る、茶色の短髪に少し小柄な男から向けられた、鋭い眼光と吐き捨てるような笑い声。
その身を切るような言葉を発したのは、市原雅臣だ。