LOST MUSIC〜消えない残像〜
「か、奏斗先輩、でも……。あっ!!」
星羅に似た澄んだ高く綺麗な声が背に聞こえる。
――でも、もう決して振り返らない。
錫代とこれ以上、星羅を重ねないために。
反応する体を必死に俺は抑えていた。
しかし、後ろからは鈍い衝突音。
「うぅ……、痛っ」
錫代の声の調子が変わって、俺は少し振り向いた。
地面にぺたりと座り込んだ錫代。
そして、右膝の赤々とした鮮血。
「何やってんだよ……」
やっぱり離れることは俺にはできないのか。
俺はすぐに駆け寄った。
「だ、大丈夫です。ドジでいつもこんなで」