LOST MUSIC〜消えない残像〜
錫代はへらへらと笑いながら、何でもないことのように俺に言う。
こんな時まで笑うのかよ……。
真っ白な肌は粗いアスファルトに擦り剥かれ、誰が見てもその傷は痛々しい。
そんな傷を負いながら笑うなんて、馬鹿としか言いようがない。
「おい、乗れ」
俺は錫代の前に背を向けて跪いた。
「えっ、あ、歩けますって!」
慌てて遠慮する錫代に、呆れたため息しか出ない。
「こんな足して馬鹿言うな。家で手当てだけしてやる」
自分は何をしてるんだろう……。
そう思いながらも俺は錫代を無理矢理おぶって、家へと向かった。