LOST MUSIC〜消えない残像〜
ドアノブを回して中へと入る俺。
俺はそこにあった光景にぴたりと動けなくなった。
ベッドサイドのチェストに伏せられた写真たてを起こし見入る錫代――。
「……この人……」
俺は救急箱なんか投げ出して、錫代の手からそれをむしり取り、チェストに乱暴に伏せ置いた。
「勝手に触れんな!」
生傷を直接抉られるような痛みが心を、胸を、支配していく。
あれは星羅との思い出だから――。
「ご、ごめんなさい!わ、私っ」
「もういい。手当てが終わったらとっとと帰れ」
震える錫代に氷のような声で言い放つ。
もう、触れられないように遠ざけることだけで俺は精一杯だった……。