LOST MUSIC〜消えない残像〜


俺は窓についた水滴が流れゆく様を見届けながら、マイペースに鞄に荷物を詰めていた。


「のそのそしてないで行くわよ!」


鞄を無理矢理奪い取りながら、どんどん歩いていく千秋。


何でこんなに強引なんだよ……。


俺は千秋に嫌気がさしながら、渋々後を追った。


「ねぇ、この間はちゃんと翠月ちゃんに会ったんでしょうね?」


千秋は俺に鞄を投げ返し、にこにこ笑いつつ威圧的に問い掛けてくる。


「くだらねぇ。他人の世話なんてやいてんじゃねぇよ」


わざわざ俺と錫代だけが会うように仕組みやがって……。



< 95 / 299 >

この作品をシェア

pagetop