LOST MUSIC〜消えない残像〜
「他人より自分のことやれよ。雅臣とはどうなんだよ?」
千秋の背中にそんな言葉を投げ掛けると、肩がびくりと揺れた。
「……あ、あたしは、……想うだけでいいの……。雅臣にはあたしはうつらないから」
いつもの逞しさは失われ、声は聞き落としてしまいそうに弱々しい。
「雅臣のドラムを傍で聴ければそれでいい……」
ぴたり動くことなく俯く千秋。
普段は男っぽいのに雅臣のこととなると、すぐ弱気になるんだ。
千秋は、ずっと雅臣だけを見てきたからな……。