LOST MUSIC〜消えない残像〜
「お待たせ〜」
千秋は至って普通に部室に入っていくと、鈍感な雅臣ににこりと笑いかける。
雅臣は無愛想なままだけど……。
「おい、奏斗」
するとふいに、千秋を通り越して、届いた雅臣の声。
珍しく呼ばれた自分の名前に俺は少し動揺した。
「お前、帰って平気だぞ。錫代休みだから用はねぇだろ」
雅臣は薄ら笑いを浮かべながら、放り投げるように言い捨てる。
「そうか。じゃあ、帰る」
やっぱり、雅臣との関係が元に戻るわけないんだよな……。
ここにいないですむなら、俺には嬉しいことなんだから――。