LOST MUSIC〜消えない残像〜
しかし帰ろうとした俺の体は、無理矢理ソファーに座らされた。
「さみしいこと言うなって。翠月ちゃんがいなくたって、いればいいだろ」
あぁ、お節介やきはもう一人いるんだった……。
智也は俺の肩から手を放しながら、柔らかく目を細めて微笑みかける。
「ねえ、翠月ちゃんどうしたの?」
「用事があるって言ってたけど、元気なさそうだったなぁ」
元気がなさそう……。
千秋の質問に対する智也のこたえに、俺の心はなぜか引っ掛かった。
俺が冷たくあしらっても、ちっともめげないような錫代がか……?