伝えたい想い 〜それでもあなたが好き〜
「これ……お願いします」
「はい、ありがとうございます」
店内の賑やかさとは裏腹に、あたし達の間に流れるのは気まずい沈黙。
でもそう感じているのはあたしだけなのかもしれない。
先程までのやり取りなんてまるでなかったかのように淡々と会計をする彼に、なんと声を掛けていいのかわからなかった。
だけど、沈黙を破るように先に口を開いたのはあたしの方で。
「……あたしのアドレスを、と思ったんですけど、書くものが無かったんで諦めました」
あはは、と笑いながら軽く言うと、ハッとしたように顔を上げる彼。
「あ、そっか。書くもの無いか。俺、携帯変えたばっかりだから自分のアドレスわからなくてさ……番号ならわかるんだけど……」
お釣りを手渡されながら今の台詞を頭の中でリピートして首を傾げる。
それは一体どういう意味で言っているのだろう。
番号なら教えてくれるということ?
それともただの社交辞令?
あまりしつこくしたら迷惑かもしれないと思っている所為で、喉まででかかった台詞をを口にする事ができない。
しかし、戸惑うあたしに彼が告げた言葉は、やはり彼の連絡先を教えてもらえる見込みが無いのだと再確認させられるものだった。